和を感じる太鼓のリズムと、オリエンタルな世界観にオクシデンタルな風が吹く。日本楽器がしっかり感じられるインストゥルメンタル1作品
ヒーリングミュージックに近いイージーリスニングというのは、とても心落ち着き癒やしの効果があり、それと同時に美しいメロディも沢山あると思います。
わたくしには、打楽器のリズムパートがしっかりしているサウンドでないと、どうしてもテンションが上がらず感情も動かないという、絶対的なこだわりみたいなのがあります。
ワールドミュージックに分類されるような、それぞれの国の民謡をフィーチャーしたような、異国感を味わえる美メロも大好物です。
そんな中で意外に多いのが、せっかくメロディが極上なのに打楽器パートが打ち込みダンスビートだったり、打楽器そのものが無かったりするもので、ガッカリすることもよくあります。
そんなわたくしの好みをしっかりと満たしてくれるグループの一つが、『ALIAKE』さんになります。
感動的メロディーが好みな私が聴いた場合の全体感想
(聴きやすさ)
🧡🧡🧡🧡🧡
すべてでメロディがしっかりしていて、変化球的な曲もなくストレートに聴きやすいです。
(抒情的美メロ)
🧡🤍🤍🤍🤍
大自然をイメージできるような趣のある印象は受けますが、癒やし効果が強く感じられ紙一重で涙腺まで届きません。
(ソロパートなど魅せプレイの充実度)
🤍🤍🤍🤍🤍
それぞれのパート同士のハーモニーが美しいサウンドで、個々の乱舞は見られません。
(壮大・神秘・幻想的)
🧡🤍🤍🤍🤍
穏やかなさと故郷感がとても感じられる世界観で、神秘性が若干感じられました。
楽器数的に壮大さもそこまで感じられず、現実性のある大自然感という表現が近く、幻想的もない印象です。
(勇壮な鼓舞メロディ)
🧡🧡🧡🤍🤍
力強く背中を押してくれるような鼓舞メロディを、個人的には何曲か感じました。
(民族音楽的要素)
🧡🧡🧡🧡🤍
太鼓と尺八があることにより、オシャレなメロディでも日本音楽というワールドミュージック感がとても感じられます。
疾走感という意味ではとても落ち着いたミディアムテンポが多いですが、打楽器のリズムパートがしっかりしているので、グルーヴ的には気持ち良いものが多いです。
全曲で複雑な展開はなく、聴きやすいタイムで構成されています。
🎼:ALIAKE
この作品メンバー
小湊 昭尚
CDブックレットより
(尺八)
土屋 雄作
(ヴァイオリン)
齋藤 純一
(ギター)
美鵬 直三朗
(太鼓)
(鳴り物)
各曲感想
1,
賽は投げられた
せつなさと勇壮さが合わさったとても格好良いメロディの曲です。
エッジの効いた勢いのある尺八の演奏がとても気持ちよく、日本的な風景が浮かぶと同時に、ヴァイオリンからはヨーロッパ的な自然風景も浮かぶ素晴らしい世界観です。
フルートの音とケーナの音とローホイッスルの音が混ざったような印象を受ける、尺八特有の音がとても似合っております。
2,
Bright Fog
民族音楽色がとても感じられるリズムが心地よい曲です。
メインを尺八が担当しており、特有のかすれさせるムラ息奏法は控えめで、どちらかと言うと12本調子あたりの篠笛に近い音だと感じます。
峠越えのような山登りにとても似合いそうな世界観が素敵です。
3,
HI FU MI
少しのファンキーさとアイルランド民謡のような雰囲気が感じられる曲です。
日本というよりは、ユーラシア大陸あたりを旅するキャラバン隊をイメージできるようなサウンドです。
尺八とヴァイオリンのハモリが綺麗で、オープニングやエンディングではなく、なにげない道中の雰囲気を表現している感じです。
4,
碧と
とても穏やかで優しい雰囲気の癒やし曲です。
普通のイメージだとフルート演奏でありそうな曲ですが、尺八が吹くことによって、どこか国の伝統民謡であるかのような印象に変わり、そして音色のあたたかさに驚きます。
5,
Claude
ミッドナイトジャズなんて呼ばれているような、少し大人な雰囲気を感じるBAR MUSICとジプシーミュージックを掛け合わせたような印象の曲です。
尺八の細かな奏法の違いがたっぷりと感じられ、音質の似た管楽器が3人ぐらいで演奏していてもおかしくないような聞こえ方に驚きで、かすれと響きとゆらぎが本当に素晴らしい楽器だと感じます。
6,
GUTTA
とても力強く勢いのあるポジティブサウンドです。
このアルバム内で特に太鼓の主張がしっかりしている曲で、最初は穏やかなヒーリングミュージックのような印象ですが、進むにつれだんだんと勇壮さが強くなっていきます。
ポルカ、ワルツであるようなダンサブルで弾むような部分が、アルプス地方の音楽のようでもあり、民族音楽的な印象ととても内容の濃いサウンドです。
7,
春の海
詳しく知らない方でもほとんどの人が耳にしたことのあり、曲名もそのまんまな有名曲のカヴァーとなっております。
アレンジとしては結構ロックしていて、オリジナルな日本的部分にとてもマッチしていると思います。
こういうアレンジこそ太鼓が乱舞していてほしいのに、主張が薄いのがとても残念です。
ただヴァイオリンと尺八のハーモニーがとても綺麗なので、斬新なアレンジという意味では素敵です。
8,
真朱
アンデス音楽のような一定のリズムに静と動が絶妙に展開していき、ヴァイオリンのアイルランド民謡的雰囲気と、暗い闇を表現しているような尺八のムラ息奏法によるダークなかすれ低音がとても格好良いサウンドとなっております。
ヴァイオリンが比較的乱舞していて、フィギアスケートとまではいきませんが演舞系スポーツなどに使用しても似合いそうだと感じる情熱的な曲です。
9,
Revelation
メロディがとても勇壮でかっこいい曲です。
太鼓を間に挟むようなイメージで、ヴァイオリンと尺八の掛け合いのような部分があったり、ギターのエフェクトもエレキ色が強めになっていてハードさがテンション上がります。
ドラマ・映画やゲームなどの奮起するようなシーンなどにとても似合いそうです。
優しい音の奏法もよいですが、尺八はこの曲のように力強い奏法のほうが好きです。
10,
TANKOUBUSHI
「月が出た出〜た〜・・・」ということで、こちらも皆さんが耳にしたことある民謡のアレンジとなっております。
盆踊りチックな太鼓のイントロから、一気に疾走感が増しおなじみのメロディへと展開していきます。
尺八音の割合が高い部分だけ聴いているとコテコテの日本民謡なのですが、ヴァイオリンだけのパートになると本当に不思議で、急にアイルランド民謡に聴こえてしまうところが少し笑えます。
11,
月華輪舞
リズムを刻みやすいドラムパートとバックのギター伴奏がとてもグルーヴィーで、チェロ奏者のインストゥルメンタルでありそうな曲です。
メロディ自体はそこまでではありませんが、スパニッシュ音楽のような雰囲気もあり、衣装で飾ったダンサーペアがフラメンコを踊っても合いそうな感じです。
尺八がフルートのようにクリアな音の演奏が多めで、和風楽器で洋管楽器が似合いそうなサウンドを演奏されてても全く違和感がありません。
最後に
今回は、自身の好みに合う和楽器がメンバーにいるグループでしたが、とても幅広い方向性の音楽を奏でているのと、メロディが良いものが多いのでとても聴きやすかったです。
そして伝統にとらわれない尺八の演奏がじっくりと聴けることも、凄く良いグループだと思います。
和楽器は好きなので、ヘヴィメタルのジャンルの中にある『フォーク・メタル』のようにじゃんじゃんロックなどに参入していって、今までにないジャンルを構築していって頂けたらとも思います。
素晴らしい技巧プレイと新しい尺八の形を体感してみたい方は是非聴いてみてください。
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