悲壮感が漂いながらもどこか哀調を帯びた世界観の中、プログレッシブサウンドが次々と押し寄せる。1作品

作品名:
戯曲音創
(2023年リマスター版)
(オリジナル1991年)
ミュージシャン:
桜庭 統

 ゲームミュージック界ではお馴染みの桜庭 統さん。
作り出す音やメロディが特徴的で、曲を聴けば、「桜庭氏の作品かな?」と、素人でも予想ができる唯一無二系の素晴らしいミュージシャンだと感じます。
こちらの『戯曲音創』は、ミュージシャン桜庭 統としてのソロ第一弾作品のリマスター版になります。

 わたくしが桜庭さんのサウンドに初めて触れたのは、1996年に発売されたスターオーシャン(SFC)で、宇宙を舞台にした作品であるゲームの世界観にとてもマッチした音が印象的な壮大で優しい音楽でした。

スターオーシャン セカンドストーリー(PS版)ではバンド演奏感を強く感じるサウンドが増え、ファンタジーを彩る壮大な音と、バトルシーンをはじめテンションの上がる場面などでは熱いバンドサウンドが響き渡り、ゲーム自体の素晴らしさと音楽の素晴らしさ両方で感動できました。

そんなスターオーシャン セカンドストーリー(PS版)の音楽をリアルタイムで触れてきた方なら、『戯曲音創』は「この世界観知ってる!!」と懐かしさを感じるのではないでしょうか。
もちろんゲーム用の音楽ではないので、メロディアスよりテクニカルの方が全面に出ていて、それぞれの楽器演奏を楽しむ作品ではあります。

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メロディック
(聴きやすさ)

聴きやすいメロディは部分にとどまり、ゲームミュージックでの桜庭サウンドを求める方には少し残念と感じてしまうかもしれません。

涙腺刺激
(抒情的美メロ)

メロディックな部分はありますが、メロディで涙腺刺激されるような部分は正直無しです。

演奏乱舞
(ソロパートなど魅せプレイの充実度)

演奏乱舞はこのアルバムの最大の売りだと思います。
旧作ということもあり、音や演出の派手さはそこまでではありませんが、次から次と音が押し寄せてくる感じが気持ち良いです。

ファンタジーな世界観
(壮大・神秘・幻想的)

ファンタジー感はとっても微妙なのですが、個人的にはRPGのような風景が浮かんでくるというより、スタジオやライブ会場で人間が楽器を演奏して楽しんでいるといった場面が浮かんでくるサウンドです。
スターオーシャン セカンドストーリー(PS版)っぽいファンタジーさが少しあります。

ヒロイック
(勇壮や鼓舞メロディ)

ヒロイックメロディもほんと部分だけで、曲そのものが勇壮だったり勇気が湧いてくると感じられるのは1曲です。

ワールドミュージック色
(民族音楽的要素)

ゲーム音楽作品では民族音楽調もたくさん聴けますが、この作品では皆無です。

疾走感

どちらかと言うと聴きづらいリズムが多いので、ノリの心地よいキーボードロックのような曲はこの作品の中には無いです。
軽快さよりもじっくり聴くといった感じです。

曲展開

プログレッシブロックをめちゃめちゃ突き詰めたという感じではないので、聴きやすい展開の方が多い印象ですが、変拍子で展開していくので曲がほとんど曲展開は複雑だと思います。

演奏ミュージシャン
(CDブックレットより)

タワーレコードでは収録内容🎧️ページで少しずつ試聴できます

🎼:桜庭 統

各曲感想

1,
HUMPTY DUMPTY

 桜庭統さんのサウンドでは、わたくしの中でやはり『スターオーシャン セカンドストーリー(PS版)』が強く頭の中にあるのですが、やはりそこに近いサウンドを期待してしまいます。

そして再生後、「よしっ!!」と、思わずガッツポーズをしてしまう期待を裏切らないイントロにまず感動で、宇宙感のある音から、桜庭節とも言える変拍子が魅力なプログレッシブサウンドが展開していきます。

ラテンジャズチックなメロディと、楽器演奏にじっくりと耳を傾け楽しむワクワク感のある音楽が展開していきます。

2,
TONE ACCESS

 一曲目と一緒で拍の取り方が一見聴きづらい感じではありますが、メロディが乗ると意外に聴きやすくテンションも上がります。

リズム部分はじっくり地を這うような印象ですが、休みなく隙間なくメロディが流れていくところが、空または宇宙をハイスピードで飛んでいるような映像が浮かび、少しダークで攻撃的なメロディと合わさり高揚感があります。 

3,
BYZANTIUM

 ピアノ系の音色がとても似合うしっとりとした少しさみしい曲です。
長い曲ではないので壮大ではありませんが曲展開が魅力的で、少し悲壮感がありフュージョンバラードのような雰囲気で進んでいき、情熱的なフラメンコギターサウンドをピアノで表現したようなポピュラー音楽で言うミドル・エイト的な部分があり、後半は苦難を乗り越えた英雄のような勇敢なメロディがあり、前半のメロディへと戻るといった、ゆっくりな曲なのにとても激しさも感じられる聴き応えのある曲です。

4,
MOTION

 音を何も考えずに自由自在に操れる音楽家が、テーマを決め即興で感情のままに表現したようなカッコイイ曲で、こちらは8分超えの長い曲なのでわかりやすく雰囲気の変わる曲展開も魅力的です。

メロディもスパニッシュで情熱的なピアノ音で力強く演奏されていて、中間にとても長い即興ソロのような憑依系の魂揺さぶる演奏が聴けます。

ベースパートの演奏がとても耳に飛び込んで来て、ピアノ音とベース音のどちらかに集中して聴くことで楽しみ方が増えるのも良いです。

5,
PARADIGM

 スターオーシャン セカンドストーリー(PS版)の音楽から桜庭サウンドに入った方には、「これこれ!」と思わず言ってしまいそうな、ザ・桜庭ワールドといった感じのメロディック曲です。

リズムも変拍子ではないのでとても聴きやすく、オルガンでの流れるような演奏とシンセのヒロイックなメロディを演奏する部分がとても良いです。
このアルバム全体からすると短い曲なので残念です。

6,
NARRATAGE

 こちらも聴きやすい曲で雰囲気は少しせつないですが、普段の生活に寄り添ったバラードといった感じで、恋愛や幼い頃の思い出回想などの場面にハマりそうなポップな曲です。

ピアノでセンチメンタルな感情を揺さぶるように優しく演奏する部分と、途中の力強く勇気が湧いてくるようなシンセソロ、そしてバックでは爽やかに広がるシンセ部分もありとても美しいです。

7,
SCRAP AND BUILD

 こちらはとても格好良いメロディの曲で、ダンサーが目の前に想像できるようなフラメンコを鍵盤楽器で表現したような印象です。

リズムは若干聴きづらいですが、それが逆に舞台上を力強く舞う姿の想像につながります。
やさしく穏やかな部分では爽やかに広がる演奏が楽しめ、激しい部分との差がアクセントでとてもよい展開の曲です。

8,
DRAMA COMPOSITION

 スタートのとソロ後から曲終わり前に出てくるリズムがとても耳に残り、ビートを刻みやすくついつい身体を動かしてしまいます。

メロディはこのアルバムの中で一番好きで、勇敢な雰囲気を感じるファンタジーな部分と、ジャズソロっぽい部分やラテンフュージョンでありそうな流れから、ハードロックのような部分まで幅広くヒロイックに展開しているところが格好良いです。

9,
DISTORTED SENSES (BONUS TRACK)

 ブックレットにはこの「アルバムのカラーとは全く異なる曲」とありましたが、そこまではかけ離れていなと感じます。
ブラスセッションが入っているのでより一層スターオーシャンっぽい部分が強調されていて、個人的にはとても好きです。

暗い宇宙をイメージできるような雰囲気も良く、突然速くなったり重くずっしりゆっくりになったりと、ミュージカルのような演劇風展開も素敵で、途中のせつなく静になる部分から最後勇敢に立ち向かうような展開になっていくのがとても素敵です。

最後に

 『スターオーシャン セカンドストーリー(PS版)』という言葉を多用してしまいましたが、正直それを期待して購入したので、大当たりだったということです。

自分の好きになったミュージシャンが違う土俵で披露したものが全く別物だったら、「あの時の作風がすきだったのにっ!!」ってなりますよね!?
もちろんミュージシャン側の気持ちを考えていない、聴く側の完全エゴではありますが、方向性が変わらないのはとても嬉しいことです。

そして、曲を聴いたときに「この曲桜庭統さん作曲でしょっ!?」って予想が立つのも、特徴が秀でている証であるので素晴らしいです。