イメージと少し遠い世界が和楽器で生まれ変わる!想像以上に美しく、古き良き日本の自然風景が蘇ってくるようで、田舎ドライブに最適の和音楽1作品。
作品名:
和楽器でジブリ(再発盤)
グループ:
AUN J CLASSIC ORCHESTRA
再発盤(2017年)
オリジナル(2008年)
自己紹介等で述べていますが、私はリズム楽器の存在が生楽器でハッキリしているインストが好きです。和楽器の音楽自体は素敵です。
しかし意外に打楽器が入っているスタイルのインストが少なく、『○○奏者の作品』のようなソロCDなどでも、リズム部分が打ち込みのダンスビートだったりすることがよくあります。
今回紹介するのは、全曲が打楽器打ち鳴らす曲ではありませんが、私の好みがしっかり詰まっている音楽を奏でてくれる素敵なグループです。
そしてもう一つ不思議なのが、聴いてみると最初から和楽器用に制作された音楽のように聞こえてしまうところです。
日本人の多くの方がご存知の曲ばかりなので、どこか懐かしく田舎の故郷を思い出しながら、和幻想な世界観に浸ってみるのもいかがでしょうか。
レコチョクは試聴可能です。
今作品メンバー
AUN J CLASSIC ORCHESTRA
山野安珠美
・箏13絃・17絃
市川 慎
・箏13絃・17絃
石垣征山
・尺八
山田路子
・篠笛
尾上秀樹
・中棹三味線
秀~hide~
・鳴り物
井上公平
・和太鼓
・鳴り物
・篠笛
井上良平
・和太鼓
・鳴り物
※CDケースクレジットより
ゲストミュージシャン
カーティスパターソン
・箏13絃
安田有希
・箏13絃・17絃
AUN パーカショングループ
・鳴り物
※CDケースクレジットより
感動メロディが好みの私が聴いた作品全体感想
🎼:AUN J CLASSIC ORCHESTRA
各曲感想
1.崖の上のポニョ
(崖の上のポニョ)
作曲:近藤勝也
宮崎 駿
久石 譲
この曲はとても楽しい雰囲気なので、どちらかと言うと難しい和楽器の世界と言うよりは、童謡のような印象に感じます。
近くの神社で縁日に向かう道中を想像しながら聴くような感じが合っていると思います。
軽やかに尺八と篠笛のユニゾンが気持ち良いです。
2.さんぽ
(となりのトトロ)
作曲:中川季枝子
久石 譲
こちらも楽しい曲ですが、和楽器の演奏のせいか雰囲気が沖縄民謡っぽく聞こえます。
篠笛・尺八メインで奏でられており、私は盆踊りの情景が浮かんできました。
3.風のとおり道
(となりのトトロ)
作曲:宮崎 駿
久石 譲
神秘的な太鼓のリズムとともに始まり、尺八の切ない音色で少し静まり進んで行きます。
そして篠笛のユニゾンが重なって鳥肌立ちました。
イントロからの太鼓のリズムが、原曲よりも深緑の森を表現できている気もします。
私は山と田んぼ・畑しかないような田舎で生まれ育ったので、小学生低学年の頃に昼間でも薄暗い山へ探検に行った記憶が蘇ってきました。
4.晴れた日に
(魔女の宅急便)
作曲:久石 譲
原曲に近いサウンドになっております。
太鼓が参加していないので、単純にハープとフルートの演奏を聴いているようにも聞こえます。
とは言え箏の和楽器独特な音でプレイされていると、原曲のヨーロピアンな風景を想像できる雰囲気とは違い、不思議と山間のそよ風香る田んぼ道などが想像できてしまいました。
5.人生のメリーゴランド
(ハウルの動く城)
作曲:久石 譲
箏で奏でるベース音がとても心地良いサウンドです。
透き通る篠笛の音色で進んで行き、途中から尺八独特のムラ息奏法で一気に和の世界に突入します。
グッと和の雰囲気が出るのはムラ息奏法の時だけで、主観ですが尺八と篠笛はフルートやリコーダー、ローホイッスルなどに音色が似ているせいもあり、リズムもワルツなので楽器が和でも雰囲気は少し遠いです。
6.もののけ姫
(もののけ姫)
作曲:宮崎 駿
久石 譲
完璧な和風だろうなと思い聴きましたが、意外や意外、私には古代インカ帝国などをイメージした民族音楽が想像できてしまいました。
入りの低い尺八の音がなんとも言えない民族音楽の雰囲気を感じさせてくれ、この曲も途中からの篠笛と尺八のユニゾンが気持ち良く、2番からは箏の切ない演奏と篠笛・尺八のユニゾンが一気に重なり、激しくも静かに盛り上がります。
とても幻想的な曲になっています。
7.となりのトトロ
(となりのトトロ)
作曲:宮崎 駿
久石 譲
軽快な太鼓でノリの良い曲です。合いの手のような三味線の演奏が味があり、笛の音がとても似合います。
子供にしか見ることの出来ない世界を、和楽器の温かい音色で聴かせてくれます。
8.いつも何度でも
(千と千尋の神隠し)
作曲:覚和歌子
木村 弓
笛と箏のみの演奏で、箏の演奏部分が少しカントリーミュージックっぽさがあり、あえてそうしているのか、尺八と篠笛のユニゾンやハモリがケルト音楽っぽさも感じます。
自然いっぱいの田舎道を、景色を見ながら徒歩でゆっくり歩きながら聴きたくなるような優しいサウンドになっております。
9.テルーの唄
(ゲド戦記)
作曲:宮崎吾朗
谷山浩子
この曲は一発でペルーの民族音楽を思い浮かべてしまいました。篠笛の優しい指打ちと伸びやかなビブラートを存分に味わえます。
篠笛の良さは、フルートとリコーダーを合わせたような音が奏でられるところだと個人的に思います。
二本調子・一本調子辺りで吹けば、尺八と変わらない音表現も可能なので、音の高さによって持ち替えなければならないことを除けば意外に万能笛だと思います。
10.風の谷のナウシカ
(風の谷のナウシカ)
作曲:久石 譲
美しいオーケストラサウンドが魅力な原曲ですが、このヴァージョンは一味違う壮大感があります。
アニメなどで過去の歴史を振り返ったり紹介するような場面に似合いそうな、少し重たい雰囲気になっております。
尺八と篠笛のユニゾン・ハモリがとても深い味わいを出しており、アニメの世界観と少し遠くなった感はありますが、『腐海』をイメージしたとして捉えると、逆にこの作品のヴァージョンの方がマッチしているのではないかと思えなくもないです。
11.ナウシカ・レクイエム
(風の谷のナウシカ)
作曲:久石 譲
こちらは原曲の雰囲気とだいぶ違います。
もともと悲しい雰囲気の曲ですが更に淋しさがプラスされたようなアラビア音楽風になっています。打楽器のリズムも和の音楽ではあまり聞かないような演奏で、外国の民族音楽感がとてもあります。
そのかわり神秘的な雰囲気が倍増しています。
12.君をのせて
(天空の城ラピュタ)
作曲:久石 譲
このアルバムどの曲もそうではありますが、君をのせては特に原曲に忠実になっていると思います。
そして和楽器演奏が1番似合っているとも思いました。とにかく切なく、オーケストラには遠く及ばないにしても、じゅうぶん壮大で泣ける美メロで表現されていると感じました。
尺八と篠笛のユニゾン以上にハモリが素敵で、勇壮さを生み出す太鼓のリズムも良いです。
13.いつでも誰かが
(平成狸合戦ぽんぽこ)
作曲:紅龍
和楽器演奏で表現するのに最も合っている曲だと思います。
雰囲気はお祭り的で盆踊りの風景が1番頭に浮かんできます。AUN パーカッショングループも加わり、締太鼓などの音も聞こえてくるのでとても賑やかです。
笛・箏・三味線・太鼓のオールスターともともとの愉快なメロディで楽しく作品を締めくくっています。
最後に
この作品全体を通して感じたのが、伝統民族楽器で古臭い独自の世界を想像していましたが、AUN J CLASSIC ORCHESTRAさんはそうではなく、とても世界的でそしてポップに聴くことが出来ました。
逆に日本古来の伝統演奏を好む方もいらっしゃるとは思いますが、私が思うに、きちんと本来の基礎が完璧にこなすことの出来る人たちだからこそ、伝統から新しいサウンドを生み出し表現していくスキルがあるのだとも思います。
実際にCDの解説に紹介されていますが、すでに世界で大活躍されているグループですし、それぞれの国の伝統で世界を感動させられるスキルにとても憧れてしまいます。
AUN J CLASSIC ORCHESTRAさんの、和楽器を習いたくなるとても素晴らしい言葉が、CD解説にありましたので最後に載せておきます。
『音楽に国境はないが、私達の音楽には国籍がある』
<CD解説より>
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