しっとりリラクシングムードと、しっかり演奏感が楽しめる心地よい癒やしジャズ。1作品
ジャズという音楽ジャンルを語ろうと思うと、とてつもなく深く、音楽理論の観点や生まれてからの歴史など、実際にジャズ演奏家として活動・勉強してきた、専門家と呼べる人でやっと説明できるものだと思います。
ですが、聴く側からすると、難しい事は抜きにして沢山の表現があり、プレイヤーの演奏をシンプルに楽しめ、インストゥルメンタルも非常に多いジャンルだと思います。
ヘヴィメタルが細かいジャンル分けされていることで有名ですが、ジャズも様々な音楽と融合した細かいジャンル分けが、調べていくと存在しています。
皆さんにもそれぞれイメージするジャズの雰囲気や音の聞こえ方など、思いつく形が存在していると思います。
今回紹介する『宵』は、ジャズと一言聞いてイメージする、ギター、ベース、ピアノ、ドラムという、わたくしの中で一番オーソドックスだと感じる編成になっておりますし、サウンド面でも、代表されるビバップ、ハードバップやスウィングジャズのアップテンポなナンバーのようなものではなく、海外のドラマや映画で見るような、落ち着いたBARで比較的静かに演奏されている映像が浮かんでくる、しっとりとした聴きやすい音が聴ける作品だと感じます。
感動的メロディーが好みな私が聴いた場合の全体感想
(聴きやすさ)
🔴🔴🔴⚪⚪
聴きやすい曲が揃っております。
しかし、あくまでもジャズ特有の世界観での事で、ポップではありません。
(抒情的美メロ)
⚪⚪⚪⚪⚪
せつないメロディの曲もありますが、残念ながら涙腺を揺さぶるような部分はありません。
(ソロパートなど魅せプレイの充実度)
🔴🔴⚪⚪⚪
あえて見せ付けるような演奏乱舞はありませんが、それぞれのパートが進行の中で流れの一部分として、テクニカルな演奏として駆け抜ける印象です。
(壮大・神秘・幻想的)
⚪⚪⚪⚪⚪
人が演奏するあたたかみを楽しむ作品だと感じますので、ファンタジーな世界観はありません。
(勇壮な鼓舞メロディ)
⚪⚪⚪⚪⚪
ジャズの世界観でもヒロイックなメロディが感じられるものはありますが、こちらの作品ではありませんでした。
(民族音楽的要素)
⚪⚪⚪⚪⚪
純粋に正統派ジャズ寄りな作品のため、民族音楽要素などを取り入れた楽曲はありません。
(リラックス)
🔴🔴🔴🔴⚪
日常生活で自然に流れていく時に、きれいに溶け込むうような印象で、じっくり耳を傾けても、BGMとして流れていてもとてもリラックスできると感じました。
すべての曲が静かな印象ですが、楽器演奏の疾走感はとても感じられます。
複雑な転調や変拍子などは無く、非常にシンプルな流れだと感じました。
🎼:竹内 勝哉
メンバー
竹内 勝哉
CDケース表記より
(ギター)
平手 裕紀
(ピアノ)
(キーボード)
荒川 悟志
(ベース)
杉山 寛
(ドラム)
各曲感想
1,
Lift Off
曲と言うよりは、アルバムの世界観を表現している出囃子のような印象です。
ひと気の無い荒廃しきった街を、冷たくホコリ混じりの風が吹き抜けるような暗い表現になっています。
2,
Interstellar
少し暗いくハードボイルドな登場人物が似合いそうな、危険な香り漂う世界観だと感じます。
全体的にジャムセッションのような展開で、軸になるメロディに向けそれぞれのパートが探り探り演奏しているようです。
歓声を上げて盛り上がる感じではないですが、各楽器の見せ場がしっかりとある、テクニカルなソロプレイをずっと聴いているような感覚がとてもテンション上がります。
3,
Timeline
雨の日の昼下がりにゆっくり外を眺め、ゆっくりと休日を楽しんでいるようなリラックスできる雰囲気です。
シックな色を出しているギターメロディと、爽やかで明るめなピアノメロディの共存が絶妙で、出だしは静かなのに、曲が進むに連れ演奏にパワフルさが追加されて行き、とても厚みのある演奏になり楽しい雰囲気が出てくる曲展開が素敵です。
個人的にはドラムが静かに叩きまくっている、テクニカルプレイが心地良くて好きです。
4,
Maze
海風が通り過ぎるような柔らかい空間の広がる、心落ち着く曲です。
音の優しさとは逆に、リズム楽器の主張はしっかりしており、軽快なドラミングとずっしり響くベース音がとても心地良いです。
5,
Play is Work
とても疾走感とワクワク感があり、プレイヤー達の楽しそうな演奏姿が想像でき、自然と体がリズムを刻んでしまうジャズの良さが沢山詰まった曲だと思います。
それと同時に即興感も凄く、ジャズの難しさも感じれると思います。
言い方は悪いですが、メロディはあってないような印象で、次々と押し寄せる技巧プレイを比較的ポップに聴くことができるサウンドです。
ギターとピアノが交代で魅せ合う展開と、終始主張し続けているベース、そしてドラムにもしっかりソロ部分が設けられてあり、ライブや映像もので見たら間違いなく興奮する曲だと思います。
6,
Iriai
きれいな夕焼けなんかが似合いそうなマッタリとした雰囲気の前半から、曲が進むにつれいつの間にかナイトクルーズにでも乗船しているかのような、オシャレな世界観へと変わっている不思議な展開の曲です。
親しみやすいメロディと、気持ち良いギターとピアノのユニゾンが後半あったり、ドラムパートの優〜しく抑えて叩く柔らかい部分と、力強く叩く部分の強弱表現も聴きどころだと思います。
7,
Erupt
メロディやキーボードの音使いなどが、とても不思議な世界観を演出している少し奇怪な曲です。
テクニカルという意味での音遊びを楽しんでいるような雰囲気で、魂に身を任せたようなプレイを各楽器が次々と鳴らしていく感じが格好良いです。
しかしその分メロディアスからは遠い曲です。
8,
886
1日の終わりのような黄昏時をイメージできる、少しせつなさを感じられる美しい曲です。
サビにあたるであろうメインのメロディをピアノとギターのユニゾンで聴かせたり、ロマンティックなピアノ演奏からギターの優しい演奏へと続き、最後にメインメロディをアレンジを変え繰り返し盛り上げていく部分が、とても熱くなれると思います。
9,
Tears of Rainbow
ラストはそれぞれの楽器が、どれだけ囁きを表現できるか競っているかのような優しい演奏の曲です。
メロディも子守唄のような、リラックスできるヒーリングサウンドになっております。
曲はとても短く、アルバムの締めくくりを飾る、最後まで聴いてくれた私達に感謝を込めた楽曲のようにも聴こえます。
最後に
時代が進むに連れ、音楽のジャンルもとても複雑化してきているのはとても感じます。
音楽理論の中では、ある程度全てのジャンルが明確化されているのかもしれませんが、専門家でもなくプレイヤーでもない、聴く側の人間からしてみれば、大きな括りはCDの表記や解説などでジャズだとわかっても、いったい何ジャズ?なのかとなると、
「この前買った◯◯ジャズ、凄く良かったよ!」
と、確定で話たりするのはても難しい事だと感じます。
今回のこちらの作品『宵』もそうで、ジャズ特有の即興演奏の如く激しいテクニカルの波が続くわけでもなく、メロディアスな作品ではあるが、スウィング・ジャズのように楽しい曲が並んでいるわけでもない。
そうなると、よく言われる『カフェジャズ』なんて呼び方になるか、ジャズ寄りの『フュージョン』とかになってくるのかな?なんて思います。
あとは『アンビエント・ジャズ』とか。
解説に明確なことが書いてない以上、結局はバンドの本人達に聞くしかなくなってしまいますよね。
そんなメロディアスで優しいこちらの作品、心落ち着く癒やしをジャズで感じたい方にオススメです。
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