ベテランの奏でる至高のメロディック・フュージョン!安心のメロディアスさと、どこかやわらかく暖かい優しい音に癒やされるインストゥルメンタル。1作品
メロディック・フュージョンという表現で言いますと、とんでもないスキルを持ったプレイヤーの集まりなのに関わらず、1曲1曲、楽器一つ一つのバランスを重視してくれていて、ある意味安心感をもって聴くことのできるのがT-SQUAREであると感じます。
今回はT-SQUAREで大活躍してくださった、河野啓三さんの参加最後となった作品となります。
デビューからもともとメロディアスなポジティブサウンドが特徴のグループだとは思いますが、啓三さんがスクエアに関わり始め、さらにその後正式メンバーになってからは、テーマパークサウンドと表現したくなるような、明るさ、楽しさ、メルヘンチック、所属楽器のみで表現するという意味でのファンタジックさが、何倍にも膨れ上がったように感じております。
初期からのファンには嬉しい名曲など、新たな演奏で9曲楽しめるDISC1。
河野啓三氏作曲の作品を集めたDISC2。
レコーディングドキュメントDVDのDISC3
DISC2の『河野啓三WORKS』を聴けば、デビューからもともとメロディック・フュージョンだったサウンドに、更に追加された程よいヒロイックな世界観をあらためて感じられると思います。
この作品時メンバー
Masahiro Ando
CDブックレットより
(ギター)
Takeshi Ito
(アルトサックス)
(EWI)
Keizo Kawano
(キーボード)
Satoshi Bandoh
(ドラム)
[Special Support]
CDブックレットより
Shingo Tanaka
(ベース)
Akito Shirai
(キーボード)
感動的メロディーが好みな私が聴いた場合の全体感想
🎼:T-SQUARE
(聴きやすさ)
🔴🔴🔴🔴🔴
期待を裏切らないスペシャルなメロディックフュージョン。
(ドラマチック)
🔴🔴🔴🔴⚪
バラードは勿論、アップテンポの曲も熱いなど、多様なドラマチックを聴けます。
(ソロパートなど魅せプレイの充実度)
🔴🔴🔴⚪⚪
何かに特化したというより、曲としてのまとまりを大事にしていると感じるグループなので、技巧プレイをメインにしたような曲はありませんが、それぞれの楽曲にあるソロパートは聴きやすくもあり絶品でもあります。
(壮大・神秘・幻想的)
⚪⚪⚪⚪⚪
美メロなのは間違いないのですが、少数の楽器で奏でるフュージョンバンドなので、壮大・神秘・幻想的で言うとほぼ感じないと言ってもよいです。
(アニメ・ゲーム的)
🔴🔴🔴⚪⚪
さすがはスクエアといった感じで、アクション系アニメやRPGゲームにありそうなメロディと世界観の曲はいくつかあります。
(民族音楽的要素)
⚪⚪⚪⚪⚪
どこかの国の伝統音楽を連想させてくれるようなサウンドは、このアルバムにはありません。
この作品はミディアム、アップテンポの曲が多く、スローな曲が少なく明るく楽しい作品となっております。
ポップインストの極みとも言えるグループなので、J-POPの展開のように馴染みやすくて聴きやすく、構えて聴くような難しく感じる曲はありません。
レコチョクは試聴できます。
各曲感想(DISC1)
1,
NEXT2020
(Satoshi Bandoh)
キラキラしたイントロからポップで落ち着くメロディで始まり、とても聴きやすい曲です。
中音域のEWIの音がリリコンにとても近く、初期のような鋭さは無いものの、個人的には懐かしさも感じさせてくれる雰囲気が好きです。
2,
Takarajima
(Hirotaka Izumi)
いわずとしれたスクエアの名曲で、オリジナルからすでにポジティブサウンド全開ですが、今作ヴァージョンは更に優しいふんわりとした雰囲気が増しており、癒やしリゾート系ミュージックとなっていると感じます。
3,
Dans Sa Chamber
(Masahiro Ando)
伊東たけしさんらしいサックス演奏が楽しめる、爽やかなサマーフュージョンといった感じの曲です。
わたくしの大好きなコナミ矩形波倶楽部が、当時シューティングゲームのアレンジで出してそうな雰囲気が感じられ、これまた懐かしさを感じさせてくれました。
4,
Unexpected Lover
(Masahiro Ando)
少ししっとりとした落ち着いた雰囲気の曲ですが、ギター、キーボードの見せ場などもあり聴き応えはあります。
曲終わりに向けてのサックスのソロ的演奏が、せつなく聞こえ甘い世界観を演出してくれています。
外国の落ち着いた夜のネオン街などに、とても似合いそうな曲です。
5,
Omens Of Love
(Hirotaka Izumi)
名曲中の名曲で、「スクエアってどんなバンド?」と聞かれた時に、曲の世界観、テンポ、メロディ、盛り上がり場面など、一番例にあげて説明しやすい曲だと思います。
オリジナルでは、聴きやすいテンポと爽やかでポップなメロディを、比較的ロック色の強い演奏で表現していますが、今作ヴァージョンでは忠実アレンジではあるものの、激しさと勢いが少し後退しており丸いふんわりとしたサウンドになっていると感じます。
個人的にギターソロが全く一緒だったのが、なつかしさが同時に感じられ、逆に涙ものの嬉しさでした。
6,
Crown And Roses
(Masahiro Ando)
ホーンセクションの音がとてもにぎやかで厚みのあるサウンドのオリジナルに対し、こちらは少しこじんまりとまとまってしまっている印象です。
その代わりギターソロが鋭く勢いのある演奏になっているのと、サックスが伊東たけしさんなだけあって、曲終わりのソロが初期っぽくて本田雅人さんヴァージョンとはまた違い、新鮮でありながら懐かしい音になっていると感じます。
7,
Faces 2020
(Masahiro Ando)
少しせつないメロディと勇敢な戦士へ捧げるような力強いメロディが魅力な、安藤まさひろさんらしいロックな曲です。
アルバム『SOLITUDE』に収録されているリミックスヴァージョンもハードで好きですが、今作ヴァージョンはハードな部分に加え緩急と強弱の幅が広がっており、静かに落とした状態から勇壮に上げていく展開がカッコいいです。
ソロも更にハードさが増しており、ギターからキーボードへのつながりがメロディアス・ハードのそれを思わせてくれ興奮させてくれます。
8,
Forgotten Sage
(Hirotaka Izumi)
サックスフュージョンとしてじっくりと演奏に酔いしれる曲です。
大人なムード漂う初期ヴァージョンに忠実ではありますが、こちらは少し落ち着いた雰囲気になっており、クセの少ないサウンドになっていると感じます。
9,
TRUTH
(Masahiro Ando)
毎度おなじみの名曲になりますが、こちらも初期型から大きく変わっているところはありません。
今作収録の全曲に共通していますが、こちらも激しく鋭い部分が少し丸くなってしまっている印象で、曲全体で見た場合テンションが上がるかと言われれば少し首をかしげたくなります。
ただ、ソロの部分に限っては新しいものをしっかり届けてくれているので、ギターソロの部分も、曲終わりのEWIソロもカッコよくなっており新鮮で、しっかりとテンションを上げてくれます。
各曲感想(DISC2)『河野啓三WORKS』
1,
Fantastic Story 〜時間旅行〜
(時間旅行より)
青春ドラマのオープニングやブライダルサウンドような爽やかで優しいメロディのイントロから、夢に向かい一生懸命挑戦し続ける者に贈る、応援曲のような勇敢さの感じられるメロディへと続いていくところが大好きなとても好みな曲です。
少し抑え気味な印象のEWI演奏がとても曲にマッチしており、暖かムードで進む中ギターソロで一気に熱い世界観が現れるところなんかも最高です。
2,
Across From The Sky
(Dreamsより)
パーカションが良い雰囲気を出していかろやかなバックに、フュージョンらしいファンキーなピアノとソウルフルなサックス演奏が見え隠れするカッコいい曲です。
激しい緩急がないサラッとした流れも心地よく、後半のピアノソロ→ギターソロに繋がりサックスで締める終わりが好きです。
3,
Future Maze
(Groove Globeより)
EDM界のドラムンベースを感じさせるリズムに、メインのメロディはあるもののサックス、ギター、ベース、キーボードがそれぞれ即興ソロを展開させて行っているような流れの曲です。
軽快なリズムと楽器それぞれが疾走感のある演奏を聴かせてくれるノリノリな1曲です。
4,
First Impression
(Dreamsより)
神曲です!!
人それぞれ感じ方は違うと思いますが、わたくし個人的には初期スクエアサウンド復活!という印象です。
具体的には、名曲である爽やかポジティブサウンドの『Omens Of Love』と、少しダークで情熱的な『Prime』を見事に合体させたように感じたからです。
恋愛・青春・刑事ドラマあたりで、それぞれの回ラストの大事なシーンバックで流れてきそうな緊張感のある勇壮なイントロ。
様々なドラマが生まれるスポーツやアーティスト活動、学生生活などをテーマにしたドキュメンタリー番組に似合いそうな、応援歌的雰囲気を感じるAメロBメロ。
「あの時があったから今がある!」そんな時の流れを総括しているような、ハッピーエンドメッセージに聞こえるサビ。
ギターソロがちょっと短すぎるのが残念ですが、Cメロ的落としからソロに入っていく演出もグッと来ますし、なにより伊東たけし節が最高にマッチしております。
わたくしの大好きなゲームミュージックのイースシリーズで、オープニングテーマにそのまま使っても違和感ないようなヒロイック要素までも感じる素晴らしい曲です。
5,
かわらぬ想い
(Discoveriesより)
曲名の通りやさしく、ちょっぴりせつない雰囲気があるバラードです。
渋い伊東たけしさんが吹く立ち姿まで、想像とともにとてもマッチしている熱いサックス演奏が魅力的です。
途中の穏やかなピアノ演奏から、サックスへと続きサビに流れる展開が好きで、盛り上げがそこで終わりではなく、ギターソロで一気にクライマックス感が出るところが沁みます。
6,
Rondo
(33より)
スクエアらしいロックなナンバーで、全体の疾走感もそうですがドラムの疾走感がとても爽快で、身体が自然と動き出します。
1曲でEWIとサックス両方が登場するところも最高で、色々なところでそれぞれの楽器が入り乱れてユニゾン、ハモリをするところが聴いていて気持ちが良いです。
7,
Eagle Spear
(Nextより)
マッタリしすぎない程よいテンポのソウル・ジャズ感のある渋い曲です。
サックスの音色がとても似合うオトナな雰囲気漂うオシャレなサウンドで、淡々と進んでいく感じではありますが、それぞれの楽器が部分部分で奏でる演奏に酔えます。
8,
Through The Thunderhead
(Paradiseより)
鍵盤のシンセサイザーとは違い、EWIならではの生きているような音のゆらめきが活かされた、フュージョンらしい爽やかなノリの良い曲です。
ダンス的振りがありそうなキャッチーで覚えやすいメロディのサビが心地よく、EWIをメインにしながらホーンセクションをバックに、それぞれの楽器のプチソロ披露のような流れが良いです。
9,
はやぶさ 〜 The Great Journey:奇跡の帰還 〜
(Nine Storiesより)
空を飛んでいるような疾走感のある明るくポップな曲です。
「スクエアはこうでなくてはっ!」と個人的に思う鋭めでリリコンチックなEWIの音が心地よく、ポジティブ全開のメロディがテンション上がります。
バランスが良く展開としてはシンプルですが、晴れやかな気持ちにさせてくれるドライブに最適な1曲だと思います。
各曲感想(DISC3)
こちらはレコーディングドキュメントの映像DVDになります。
こういった、メロディで会話ができるような関係を見ると、楽器を幼少期から始めなかった事を本当に後悔します。
本当に素晴らしいメンバーです。
最後に
現在は療養も兼ねて脱退してしまった河野啓三さんですが、長い歴史の中で在籍メンバーの色を大きくスクエアサウンドに反映したミュージシャンだったと感じる素晴らしい方です。
数々の名曲と河野啓三氏が作り出す音楽世界、そしてドキュメント映像とボリューム満点なT-SQUAREおすすめの1作です。
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