旧作ながら、聴きやすく心地良いキーボードハードロックサウンド。OVAサウンドトラック1作品
日本ファルコムは初期から現在に至るまで、作中音楽に力を入れているのがとても伝わってくるメーカーだと感じます。
代表作であるイースシリーズのサウンドは、特にそう感じさせてくれる作品だと個人的に思っています。
1990〜1994年辺りは、専属バンドと呼ぶのが相応しいかわかりませんが、自社の作品音楽を演奏するグループを、いくつかのメーカーが結成していて、良い意味で競い合っていた素晴らしい時代だったと振り返ります。
当時は、好きなゲームが発売されると、サントラと各バンドのアレンジヴァージョンを聴き比べるのがとても楽しみでした。
お小遣いの関係でリアルタイムに聴けていたのは、この『J.D.K.BAND』と『コナミ矩形波倶楽部』だけではありましたが、それ以外のバンドもメーカーの色がそれぞれ出ていて、特徴の異なるアレンジを表現していた素晴らしいグループでした。
今回はゲームとしてのイースではなく、OVAという形で世に出た映像作品のサントラになり、わたくし自身実際に作品は見ていないので、内容に関しては細かくお伝えできませんが、イースⅡを原作としてアレンジされたストーリー進行になっているようです。
「あっ、忘れてた!」というのが正直なところで、ブログを書き始めた最初の頃に投稿しようと思っていたのが、すっかり頭から飛んでしまっていました。
初代J.D.K.BANDが担当したものは、様々なCDに収録され、他でも素晴らしいアレンジを聴くことができますが、その中でも一番素晴らしい出来なのではないかと思えるのが、この『イース 天空の神殿〜J.D.K.BAND編』になります。
オリジナル盤も探せば中古が買えますが、全曲聴くためにはⅠとⅡを2枚手に入れる必要があるので、復刻盤の内容で投稿いたしました。
ちなみに、オリジナル版は『パーフェクトコレクション イース天空の神殿 J.D.K.BAND編』(1993年)のⅠとⅢになります。
音良し、演奏感良しのアレンジでお馴染みの曲を楽しむことが出来ますし、現代の発達した壮大な劇中サウンドとはまた違った、少ない楽器音で力強く演奏されるハードロックがとても心地良いです。
CDブックレットクレジット
Arranged by
CDブックレットより
TOMOHIKO KISHIMOTO
Performed by
J.D.K.BAND
Comporsed by
Falcom Sound Team jdk
感動的メロディーが好みな私が聴いた場合の全体感想
(聴きやすさ)
💙💙💙💙💙
ゲーム、イースⅠ・Ⅱの曲を、キーボードメインのハードロックサウンドでアレンジされており、原曲の形を崩さず、演奏感を感じながら神秘的でファンタジックなメロディが聴けます。
(抒情的美メロ)
💙🤍🤍🤍🤍
イースシリーズは、グルーブ感ある曲が多いのが特徴でもあるので、感傷に浸る世界観に引き込まれるようなメロディは弱めです。
(ソロパートなど魅せプレイの充実度)
💙💙🤍🤍🤍
古い作品でもあるので、派手さはそこまでないのと、アニメのサウンドトラックとなりますので、人の演奏が浮かぶライブ感のような部分は弱いですが、バンドサウンドでのアレンジが多いので、ギター、キーボードソロを入れた展開の曲もあります。
(壮大・神秘・幻想的)
💙🤍🤍🤍🤍
作品のイメージとリンクする部分として、神秘的で幻想的な雰囲気はそれなりにありますが、壮大さの部分に関しては弱いです。
(勇壮や鼓舞メロディ)
💙💙💙💙🤍
人それぞれ感じ方は違うと思いますが、個人的にイースシリーズはヒロイックサウンドの宝箱だと思います。
そんなイースの原点でもあるⅠ・Ⅱの曲も、勇者・ヒーローチックなメロディは多めです。
(民族音楽的要素)
💙🤍🤍🤍🤍
ハードロックサウンドメインなので、民族楽器の表現はありませんが、雰囲気で神秘性のあるものがあります。
曲数が多いので作品全体としては難しいですが、リズムの部分はドラムセットでの演奏が多いので、グルーブ感と疾走感のあるアレンジは多いです。
初代J.D.K.BANDの演奏した作品の中で最高の出来になっていると感じるのに、サッと終わってしまう曲展開がほとんどなので残念です。
ですが先程も述べたとおり、ギターやキーボードソロが入り後半に盛り上がっていく展開の曲もいくつかございます。
🎼:J.D.K.BAND
Recommended Works
今回の紹介商品は、J.D.K.BAND編を1枚にまとめた復刻盤になります。
各曲感想
1,
TO MAKE THE END OF BATTLE
根強い人気で、とてもハミングしやすくリズムもノリやすい曲です。
J.D.K.BANDアレンジだと、厚みのある音でしっかりと叩かれるドラムのリズムが心地よく、バックのギターと鋭いキーボード音がクセになります。
こちらはショートヴァージョンです。
2,
ダルク=ファクト
こちらもおなじみダルク=ファクトのテーマ曲になります。
諸悪の根源なムードがとても表現されているメロディで、物語の展開をシンプルにわかりやすくしてくれる役割のある名曲です。
デジタルシンフォニーにしっかりとドラムも入ったダークなサウンドです。
3,
リリア救出
イントロが流れると、「あれ?WANDERERS FROM Ysの、『イルバーンズの遺跡』?」と思ってしまうメロディです。
作曲の時点でこうだったのか、岸本友彦さんのアレンジでこうなったのかはわかりませんが、イントロメロディはそっくりです。
内容はメドレーの形になっており、ポップなハードロックサウンドから、シンセによるニューエイジな雰囲気へと続き、最後は疾走感と戦闘ムードのあるメタル寄りサウンドへと展開していきます。
4,
ダームの間 #1
あやしくダークな雰囲気を表現する役割を感じるイントロから、行進曲に合いそうなずっしりとしたドラミングとギターサウンドの曲です。
5,
逃走そして禁断の地へ!
イースⅡの『Over Drive』イントロを使用した極短な曲です。
テンション上がるメロディなので、思わず「終わりかいっ!?」とツッコみたくなる短さです。
6,
ノルティア氷壁
曲名を見て、「待ってましたっ!」となる人も多いと思われる名曲なのですが、前曲と同じで極短です。
7,
TOO FULL WITH LOVE
シンプルでわかりやすく穏やかさのあるメロディを、ヒーリングミュージックのように聴かせてくれる短曲です。
8,
危機のリリア
パイプオルガンとギター演奏で少しダークな前半と、状況説明的な世界観の寂しい雰囲気な弱奏曲のメドレー形式です。
9,
世界果つるところ
『ノルティア氷壁』のメロディを使用した、規則正しいリズムな行進曲風の短曲です。
10,
ダームの間#2
あやしく暗い静かな雰囲気から、ずっしりとしたハードロックサウンドをバックに、不思議なムードのメロディを乗せた流れへと展開していく短曲です。
11,
翼を持った少年
アドルのテーマへのオマージュ作品のようなサウンドで、タイトルを変えアレンジを施し、ゲームではワンダラーズフロムイースで使用された曲です。
こちら天空の神殿ではとてもポップな仕上がりになっており、別CDですがVocalヴァージョンが存在するくらい歌を乗せやすいアレンジになってると感じます。
12,
アドルのテーマ
前曲に対して本家と言いましょうか、PCエンジンではオープニングテーマとして使用され、イースⅠ・Ⅱの世界観にとても合っているメロディだと感じます。
そんな曲の激しく疾走感のあるメタル調アレンジになります。
音色やリズムパートの特徴が、初代J.D.K.BANDの良さとともに色濃く伝わってくる熱い曲です。
13,
FIRST STEP TOWARDS WARS(草原)
ゲーム、イースⅠのフィールドでお馴染みですが、どの作品でも素晴らしいアレンジが聴ける曲で、天空の神殿では、勇ましさ全開のハードロックに、行進曲のようなズンズン歩んで行く感じのリズムがシンプルで心地良いです。
14,
プロローグ
〜TO MAKE THE END OF BATTLE ーFull Versionー
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといった名作が、オープニングテーマと言ってすぐに曲が思い浮かぶのと一緒で、イースでもお馴染みのオープニングメロディーを、オーケストラで繊細にアレンジされたプロローグから、初代J.D.K.BANDの代表作アレンジとも言えるTO MAKE THE END OF BATTLEへと続く、スペシャルなメドレー曲になります。
15,
EMERGENCY PROTECTERS ーVocal Versionー
(イースⅡ “PROTECTERS"より)
ヴォーカル曲になります。
16,
バーンドブレス
イースⅡ溶岩地帯の曲で、ドラムパートとベースパートのリズムの進行が意外に癖になるサウンドが良いです。
ただこちらでは極短曲です。
17,
ゲラルディ
イースⅡデカキャラBOSS戦の曲のスピードメタルアレンジです。
短い曲ですが、哀愁あるギターソロで曲を締めくくる展開は良いです。
18,
出発
朝靄の中太陽が上り始める情景などが浮かぶ、爽やかな雰囲気の始まりからバーンドブレスへとつながるメドレー曲です。
軽快なリズムのドラムと、ギターのハードな部分が絶妙にマッチしております。
19,
サルモンの神殿
ゲーム本編でもテンションが上がる場面のうちのひとつである曲を、疾走感のあるキラキラキーボードサウンドでアレンジしています。
ハッキリとしたドラムの音で演奏感が感じられ、ゲームのイメージに近いカッコイイアレンジになっていると思います。
20,
鐘撞き堂
感覚を狂わせてくるような、少し不気味な雰囲気のメロディが特徴な曲ですが、こちらもやはりドラムが演奏感をアップしてくれているお陰で、軽快なノリのサウンドとなっております。
21,
カウントダウン
前曲と全く一緒と言える曲で、ループサウンドになっているようで、タイトルからすると状況説明的な意味合いを持つものだと思います。
22,
鐘撞き堂の戦い
20,21曲目と同じメロディを入れたキーボードロックサウンドとなっております。
疾走感のあるリズムとギター演奏が格好良く、ギターソロやベースソロも組み込まれており、サントラ特有の短い曲が多い中、しっかりとした展開で聴きごたえのある方だと思います。
23,
憎しみのアドル
曲名は意味深ですが、サルモン神殿BGMのアレンジになります。
バックの透き通るキーボード音と重厚感のあるベースパートが気持ちよく、哀愁感と勇壮さが感じられるお馴染みのメロディが、しっかりとした演奏感を感じながら聴けます。
24,
運命の流れるままに…
Subterranean Canal (地下水路)の曲を、穏やかさとせつなさ強めでスローにアレンジしてあります。
ヒーリング音楽のような世界観にしっかりとドラム演奏が入り、管楽器の主旋律と合わさって心落ち着くサウンドになっております。
25,
バトル・オブ・キース
イースⅠの曲中でも人気の高いPALACE OF DESTRUCTIONが、疾走感のあるキーボードハードロックにアレンジされております。
全体的に落ち着いた雰囲気の音使いで、刺激は弱めですがギターソロで締めるなどの展開も聴きどころではあると思います。
とても良いアレンジなのですが、極短曲で残念。
26,
ダレスとの死闘
イースⅡのProtectorsとアドルのテーマがメドレーになっており、数少ない長めの曲になっております。
イントロからテンションが上がりツーバスで疾走する展開はなかなかだと思います。
ProtectorsはEWIで良く使われるような鋭いキーボード音で主旋律を奏で、後半のアドルのテーマでは広がりのある爽やかめな音にシフトするところが、飽きさせない演出になっていて、ダークで力強い前半から一気にヒロイックな後半へと続く流れがとても格好良いのと、最後まで爽快に疾走するところが最高です。
27,
最後の聖戦
こちらもお馴染みラスボスBGM、Terminationのハードロックアレンジになります。
それぞれのハードでの使用ヴァージョンの感覚的平均よりスローなテンポになっていますが、その分重厚感が増していると思います。
鋭めのキーボード音とギターリフ、そしてオルガン音とキーボードソロ、ギターソロなど密度の濃い展開が聴けるので、バンド演奏アレンジとしてはこのCDで一番格好良いと思います。
28,
Endless History(インストヴァージョン)
THE MORNING GROWのヴォーカルヴァージョンであるEndless Historyなのですが、インストヴァージョンとなっていたため、当初ガッツポーズで喜んだのですが、なんと、ただヴォーカルパートを消しただけのものでガッカリだったのを思い出します。
ヴォーカル部分をしっかり別楽器で表現してくれていればとんでもなく素晴らしい曲だったのですが、こちらはただ伴奏を聴いているだけになってしまっています。
とはいえ、もともと素敵なメロディの曲なので雰囲気は伝わってきます。
29,
TOO FULL WITH LOVE
とても穏やかで少し陽気なアレンジとなっております。
恐怖から開放され、日常がもどった世界を表現が軽快に表現されているようで、自然と笑顔になれるようなサウンドです。
30,
STAY WITH ME FOREVER
日本ファルコムのどのシリーズでも初期からしっかりと作り込まれている、「プレイヤーさんお疲れ様」ときちんと言ってくれているようで、大好きなエンドロール曲のうちの1曲です。
グランドフィナーレ感もちゃんとあり、ゲームのファンタジーな世界から、良い意味で現実に引き戻してくれ、満足感も感じられるメロディになっていると感じます。
15、29、30曲目はBonus Track
最後に
OVAイース 天空の神殿は1992年スタートと古い作品になりますが、アニメ化されているぐらいですので、イースシリーズが当初から人気の高いのがうかがえます。
個人的に素敵だなと感じるのが、アニメ化されるとゲーム使用曲が全く使用されなかったり、作品を象徴する曲だけオリジナルアレンジで使用されるに留まる事が多い中、J.D.K.BANDというプロのミュージシャン演奏で、アレンジしているとはいえゲーム使用曲を完全に使用している部分になります。
初代J.D.K.BANDは活動期間が短めではありますが、担当したアレンジ・演奏は、聴くだけでそれとわかる音世界が広がり、正統派ハードロック、メタルをベースに、現代(2024年現在)の音楽作品と比べたら地味に聞こえますが、バンドの色がしっかりと出ているのは凄いことだと思います。
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