生楽器の厚みある演奏で新たな印象へと生まれ変わる!期待通りのアレンジから変化球アレンジまで新鮮なサウンド。王道を外すことで見える新しい景色もある。1作品
作品名:
ふぁるこむボスざんまい
(2012年作品)
制作:
Falcom Sound Team jdk
日本ファルコムさんのこういった企画的音楽作品は、とても幅広いジャンルのアレンジを披露してくれるのがとても好きです。
Falcom Sound Team jdkの作るサウンドは、良い意味でとても意表を付いてくるところがあり、「えっ?これが戦闘曲?」「これがボス曲?」など、通常だとオープニングテーマ向き、または感動のシーン向きに使用しそうなメロディや雰囲気の曲を、ボス戦や戦闘曲として持ってくる印象もあり、「そう来たかぁ〜」とよく思わされます。
今作品はアレンジで意表突きをしてくれているのと、期待通りの「待ってました!」アレンジまで幅広く楽しめます。
作品ポイント
・このCD発売時期から見て、比較的古いゲームの曲がラインナップされている。
・バンド演奏は生楽器で演奏されているパートも多く、それぞれのプレイ技術もたっぷり楽しめる。
・ボス戦曲を集めてはいるが、涙腺を刺激し感動に溺れるような曲・アレンジは残念ながら少ない。
制作メンバー
<Arrangement>
CDブックレットより
Yukihiro Jindo
[4,8,9,12曲目]
Toshiharu Okajima
[1,3,5,11曲目]
Noriyuki Kamikura
[2,6,7,10曲目]
Kiyoshi Ibukuro
CDブックレットより
(24絃箏)
[3曲目]
KIKO
(ソプラノ)
[4曲目]
Toshiaki Kishi
(テナー)
[4曲目]
Akiko Nagano
(ヴァイオリン)
[8,9曲目]
Mizuki Mizutani
(ヴァイオリン)
[1,3,5,11曲目]
Naomu Soeda
(サックス)
[7曲目]
Terukazu Inoue
(ギター)
[1,3,11曲目]
Daisuke Miyazaki
CDブックレットより
(ギター)
[2,7,10曲目]
Kazutoshi Narisawa
(キーボード)
[5曲目]
Noriyuki Kamikura
(キーボードソロ)
[1曲目]
Toshitsugu Maehara
(ベース)
[1,3,11曲目]
AKIRA a.k.a.art-vox
(ベース)
[5曲目]
Yukihiko Oshigoe
(ベース)
[2,7,10曲目]
Toshiharu Okajima
(ドラム)
[1,3,5,11曲目]
感動的メロディーが好みの私が聴いた場合の全体感想
🎼:Falcom Sound Team jdk
メロディアス
(聴きやすさ)
🟡🟡🟡⚪⚪
涙腺刺激
(抒情的美メロ)
🟡⚪⚪⚪⚪
演奏乱舞
(ソロパートなど魅せプレイの充実度)
🟡🟡⚪⚪⚪
曲展開
(←シンプル・複雑→)
🟡⚪⚪⚪⚪
疾走感
(⬅スローテンポ多・アップテンポ多➡)
🟡🟡⚪⚪⚪
ワールドミュージック色
(民族音楽的サウンド)
🟡⚪⚪⚪⚪
ファンタジック
(壮大・神秘・幻想的)
🟡🟡🟡⚪⚪
各曲感想
1,
最強の敵
[イース-フェルガナの誓い-(イースⅢ)]
日本ファルコムのゲームの中でボス曲としておなじみの曲になります。
PCエンジン版と比べさせていただきますが、少しテンポアップしておりツーバスドコドコのスピードメタルアレンジになっております。
北欧メタルバンドの、ストラトヴァリウスの曲中ソロでありそうなキーボードイントロが印象的で、全体的にはヴァイオリンがリードとして演奏しておりますが、重厚感のあるハードなサウンドになっており、ファンタジックな要素よりダークなネオクラシカルのようなサウンドです。
ギター、ヴァイオリン、キーボードのそれぞれのソロの後、短いですがユニゾン、ハモリもしっかり用意されており、曲展開も満足な構成になっています。
2,
邪魔をするな!
[英雄伝説 朱紅い雫]
ザクザク刻むギターリフとバックのオルガン音が心地よく、1曲目よりテンポは遅いですがメタル曲となっております。
雰囲気的には通常戦闘か一番ランクの低いボスのテーマでありそうな雰囲気で、メロディで感動できる感じではなく熱い魂を表現したアレンジになっていると思います。
しかし、ギター、キーボードソロに入ると一変し激メロ展開になります。
勇壮でメロディアスなギターソロから、流れるようなキーボードソロへと展開していくところがカッコイイです。
3,
風神雷神
[戦国ソーサリアン]
原曲がとてもカッコイイ曲なので少し残念なアレンジではありますが、本格的な和音楽としてアレンジされており、また別の感じが味わえます。
24絃箏も実際の楽器が使われているだけあって、戦国の雰囲気は抜群です。
箏も常にバックやメロディで鳴っており、ヴァイオリンとギターの演奏が入ってくるとハードロック色が強くなって盛り上がり、淋しい雰囲気の中どこか熱い情熱のようなものが見え隠れするバラードで、和風なゴシック・ロックと呼ぶのが似合いそうです。
4,
ふるわれる奇蹟
[英雄伝説 碧の軌跡]
こちらはサントラのオリジナル版とほとんど変わらないアレンジになっております。
ソプラノとテナーのヴォーカルがクレジットされているので、コーラス部分を生歌で録っているようです。
制作は打ち込みだと思いますが、重厚感と生演奏感はこのヴァージョンの方が迫力が出ています。
5,
ガドビスタル
[ブランディッシュ]
少しテンポは落ちますが原曲に忠実に、キーボードとヴァイオリンの素晴らしい演奏が楽しめます。
ジャズの雰囲気のあるプログレッシブ・ロックといった感じで、後半に来るヴァイオリンの美メロと、複雑に叩きまくるドラムが聴きどころです。
6,
Inevitable Struggle
[英雄伝説 零の軌跡]
FM音源とドラムをPCM音源でアレンジしたファルコム原点アレンジ。
というようなブックレットに解説がありますが、昔からのファルコムサウンドファンにとっては懐かしい音色のアレンジになっております。
原曲に忠実なのでわかりやすく、音だけ新鮮な印象を与えてくれます。
7,
エビル=シャーマン
[ソーサリアン・天の神々たち]
極上のフュージョンアレンジになっていると思います。
サックスとギターのユニゾンや交互に演奏する部分などが格好良く、サックスが加わったことにより名探偵コナン感が出ています。
元々が哀愁ある素晴らしいメロディなので、生楽器の演奏で更にテンションの上る展開になり、それぞれの楽器の見せ場もしっかりとソロで用意されているので、フュージョン好きにはたまらないアレンジだと思います。
ベースの演奏がとても格好良く、最後ピアノ〜サックス〜ギターとソロでフェイドアウトしていくところなど、わたくしも大好きです。
8,
それぞれの未来に
[英雄伝説 海の檻歌]
もともとが感動的なメロディの曲なので、メロディは文句なしのとても壮大なアレンジになっております。
サントラ版は勇壮さだけが印象に残る感じですが、今作では厚みのあるオーケストラサウンドになっていて、勇壮さだけではなく、悲壮感や熱く力強い意思などが入り交じったような感動作へと生まれ変わっていると感じます。
一番良い部分のメロディが何度も出てくるので、盛り上がりが沢山やって来る展開も素晴らしいです。
有名な作曲家のクラシックなどオーケストラ音楽はあまり好みではないのですが、この曲のようなメロディばっかりであれば、ガンガン聴くと思います。
9,
哀しき王妃
[英雄伝説 白き魔女]
サントラの原曲がもともと戦闘っぽくない曲なので、今作アレンジも雰囲気で言うと大きな戦闘の前の大事なストーリーで流れる方が似合いそうな壮大さを感じます。
ヴァイオリンの演奏がとてもせつなく、オーケストラの演奏をバックにとても感動的なメロディで心に響きます。
10,
ブルー・ドラゴン
[ソーサリアン・暗黒の魔道士]
とてもノリの良いハードロックアレンジになっております。
ギター演奏をたっぷり楽しめ、曲自体がソロ演奏を披露しやすい展開になっているので、キーボードなど細かい部分でアドリブっぽい技巧が散りばめられている感じです。
プログレッシブメタルなどで、変拍子などテクニカルな演奏の間に聴きやすいメロディアスな展開を入れてくることがよくありますが、それに似たような展開を途中入れてきていて、楽しみどころ満載な曲です。
11,
TERMINATION
[イースⅠ&イースⅡ クロニクルズ(イースⅡ)]
アレンジしたのはクロニクルのヴァージョンになってますが、PCエンジン版のTERMINATIONを初めてゲーム中で聴いたとき、ラストボスなのに「なんて爽やかな曲なんだ!」と思ったのをおぼえています。
最初にも書きましたが、日本ファルコムは良い意味で期待を裏切るサウンドを重要なポイントに持ってくる事がよくあります。
ですが、今作のアレンジはラストボス感を少しアップしてくれるサウンドにしてくれています。
イントロから新しいアレンジで、メタルのようにツーバスの部分もあり、ヴァイオリンがメインになっていることにより、ヴァイキングメタルなどで時々ある民族楽器を使った勇壮な展開などに近い印象を受けました。
そして中盤で入るギターソロの抒情的なメロディが格好良く、昔のゲームの曲でシンプル展開な原曲を、強敵を迎え撃つに相応しい素晴らしいサウンドへと生まれ変わっております。
12,
キングドラゴン〜ソーサリアン・ザ・プレリュード
[ソーサリアン]
キングドラゴンという曲自体はとてもダークなサウンドなのですが、交響詩の展開のように途中別曲を挟んで、とても感動できる構成にしてあります。
強敵に立ち向かい敗れそうになり、一筋の光が再び戦う力を与え、立ち上がり最後撃ち倒すようなストーリーの展開を曲で表現しているようです。
もとはシンプルなボス曲がオーケストラサウンドと構成で、壮大さと感動両方を持つ曲へとパワーアップしております。
最後に
最初この作品を購入したとき、タイトルが『ふぁるこむボスざんまい』となっていることから、やはり楽しみにしていたのは、ゴリゴリのHR/HMアレンジがズラリ勢ぞろいしていてほしいということでした。
しかし期待も虚しく、正確に表現すれば2曲しか期待通りのアレンジはありませんでした。
ただ、聴いていくうちにジャンルも様々で、原曲に忠実であるにも関わらず展開や新たなメロディの追加などで、どんどん味の出てくるレベルの高いアレンジだと感じるようになりました。
一番古い原曲と聴き比べてみるのがとても楽しく、生まれ変わりの凄さなどが体感できるのではないでしょうか。
ハードの性能が上がり、サントラで正直満足なサウンドが作れてしまう時代になってしまったとは思いますが、日本ファルコムさんには今後とも、変化球的な楽しいアレンジCDを沢山出していっていただきたいです。
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