バンドスタイルで奏でるヒロイックファンタジー・インストゥルメンタル聴くならコレ!!新たに生まれ変わった美メロ達。1作品
作品名:
ADOL CHRISTIN
Ys 35th ANNIVERSARY MUSIC WORKS
(2023年作品)
音楽:
Falcom Sound Team jdk
わたくし的には「待ってましたッ!」な内容の作品になりますが、さすがゲームミュージックアレンジの歴史が長い日本ファルコムさんといった感じで、原曲の世界観をしっかりと残しつつ、奥深く生まれ変わったサウンドで、イースというゲームを知らない、またはインストゥルメンタルは好きだけどゲームミュージックなんて聴かない、といった方々にも受け入れてもらえるのではないかと感じます。
今作品は、イースシリーズというのもそうですが、主人公アドルがたどってきた冒険の軌跡に焦点を当てているということもあり、わかる人にはわかる「これこれっ!」といった選曲になっております。
そして作品を知らない方、またはゲームに全く興味のない方には、とにかくファンタジックでメロディアスなバンドサウンドを、演奏家起用の厚みのある音で楽しめると思います。
そして、もし仮にイースサウンドに触れるのがこの作品からという人が居たとしても、ツボをおさえた新旧の選曲になっていて、全曲を通してしっかりと歴史を辿れると同時に、日本ファルコムというゲームメーカーの、劇中曲に対する情熱、アレンジに対する力の入れ方にも触れることが出来ます。
『THEME OF ADOL』と題された曲のお馴染みのメロディで、3種類のヴァージョン違いを全体を通して聴くことができる点が、個人的にとても嬉しかったです。
オーケストラサウンドと、ハードロックサウンドが中心ですが、単なるファンタジックサウンドにとどまらない濃い内容が素晴らしいです。
メンバー
Mixing & Mastering Engineer
CDブックレットより
Koki Tochio
Arrangement & Direction
Yukihiro Jindo
感動的メロディーが好みな私が聴いた場合の全体感想
🎼:Falcom Sound Team jdk
(聴きやすさ)
🩷🩷🩷🩷🩷
数ある名曲の中からメロディアスなものが選曲されています。
極端に静かな曲やダークな曲もないので、気持ち良く聴けます。
(抒情的美メロ)
🩷🩷🤍🤍🤍
懐かしさや哀愁などテンションの上がる感動はありますが、悲壮感など抒情的な涙を誘う曲は、部分的に感じれる程度だと感じます。
(ソロパートなど魅せプレイの充実度)
🩷🩷🩷🤍🤍
個々のテクニカルな演奏をメインで魅せる音楽ジャンルではないので、曲としての全体的なバランスがとれていると思います。
しかし、しっかり演奏家を起用しているので、曲の中でソロのパートがきちんとあるものもあります。
(民族音楽的要素)
🩷🩷🤍🤍🤍
ゲームミュージックということで民族音楽的要素がありそうですが、意外にも1曲ぐらいで、全体的には勇壮で格好良いものや壮大なものがほとんどです。
(壮大・神秘・幻想的)
🩷🩷🩷🩷🤍
オーケストラサウンドで王道のファンタジーサウンドと、HR/HMアレンジでバンド演奏感をたっぷり感じれるファンタジーサウンドの両方が楽しめます。
アルバム全体で見るとバンド演奏の曲が疾走感があり、スピードメタル風のアレンジもあります。
ゆったり壮大な曲とハードで疾走感のある曲のバランスがとても良いアルバムです。
メドレースタイルのものもありますが、全体的にはコンパクトにまとまった、複雑な曲展開のないアレンジになっております。
好きな曲など、もう少し長めにアレンジしてほしいのと、複雑な曲展開は好きなので、個人的に残念な部分はありました。
レコチョク試聴出来ます。
『スリーブケース仕様』と、『豆皿セット限定シリアルカード入りBOX~イース生誕35周年~』という数量限定盤も販売しておりますが、数量到達により販売終了している可能性がございます。
気になる方はファルコムショップを覗いてみるのをオススメします。
各曲感想
1,
THEME OF ADOL 〜FIRST STEP TOWARDS WARS〜
(イースⅠ)
1曲目からこのアルバムのセンスが表れている選曲です。
イーズシリーズの前・中期に物語を彩ってくれた『THEME OF ADOL』の優しいオーケストラアレンジから、メドレーで人気曲の『FIRST STEP TOWARDS WARS』の雄壮でリズムパートの主張も激しくテンションの上がるオーケストラアレンジへと続きます。
2023年現在の日本ファルコムらしいファンタジックなサウンドで、バンドサウンドでアレンジされることが多い名曲が新鮮な印象へと姿を変えて登場です。
2,
TO MAKE THE END OF BATTLE
(イースⅡ)
こちらもアドルの冒険歴史に欠かすことの出来ないイースⅡのオープニング曲です。
とても数多くアレンジされてきたこの曲ですが、今回は変に大きな変化球がなく初代J.D.K.BANDのアレンジに近くなっていると感じます。
しかし、キーボードメインだったサウンドからギターメインに変わっており、キーボードの音も鋭く主張する音質から耳に馴染みやすい格好良いものになっており、ギターとキーボードのソロ掛け合いが盛り上げてくれます。
初期のファンの方は、ストレートなアレンジに懐かしさを感じるのではないでしょうか。
3,
イース -失われし古代王国-
(イースⅠ&Ⅱ)
『Feena』と表記されたり、ただ『Opening』と表記された曲の一部分に使用されたりと様々でしたが、当時個人的にはロールプレイングゲームでの、オープニングイメージの常識を覆した曲だと思っています。
これから世界を平和へと導く冒険の旅が始まるイメージとは逆の、神秘的な要素が強い少し暗いメロディで、正直テンションの上がらない幕開け感が強い印象でした。
そんな子供の頃に受けた暗い印象の強い曲ですが、今作でも原曲に忠実で神秘的な要素が強いアレンジとなっております。
サウンドはとても優しいオーケストラアレンジで、ヒーリングミュージックとして癒やしを感じれると思います。
4,
セルセタの樹海
(イース セルセタの樹海)
こちらは、いくつかある最もアレンジしてほしかった曲のうちのひとつです。
イース セルセタの樹海でも原曲とほぼ変わらないアレンジで収録されていて感動しましたが、こちらの作品では、緩急のある曲展開もしっかりとした感動系の熱いスピードメタルへとパワーアップしております。
元々の哀愁あるメロディとメタルアレンジがとてもマッチしており、ファルコムが得意とするヴァイオリンをフィーチャーしたヒロイックサウンドが素晴らしく良いです。
ギターのハモリ、ギターとヴァイオリンのハモリ、掛け合い、ソロなど、時間は少し短い気もしますがとても聴きどころ満載で大満足のアレンジです。
5,
バレスタイン城
(イース フェルガナの誓い)
こちらも大変人気のある曲になりますが、フェルガナの誓いがゲームとして発売された当時に出たアレンジCDに収録されていたバージョンに近いです。
ですが、激メロ部分がとても増えており、ギターの速弾き、ヴァイオリンのパート、ハモリ、掛け合い、ユニゾン、ソロと、両楽器とも見せ場が増し増しになっております。
ギターとヴァイオリンのインストゥルメンタルユニットsoLiの2ndアルバムMy Garden…の中でアレンジしております。
6,
冒険への序曲
(イース フェルガナの誓い)
輝き眩しい朝日がイメージできる爽やかなPCエンジン版のサウンドをそのまま壮大なオーケストラアレンジにしたような印象です。
イントロの部分にTHEME OF ADOLのメロディを持ってきていて少しさみしげな雰囲気ですが、それが逆に後の展開で押し寄せる爽やかさを強調していて素晴らしいと思います。
7,
FIELD OF GALE
(イースⅤ 失われた砂の都ケフィン)
イースシリーズのフィールド曲の多くは、ロックやニューエイジ等をバンドサウンドで表現することが多いですが、イースⅤはオリジナルもゴリゴリのオーケストラで表現されていてとてもレアだと思います。
今作品のアレンジも素晴らしく、勇壮さと哀愁さを合わせたようなメロディを厚みのあるオーケストラサウンドで表現しております。
オープニング曲を少し暗く妖しい雰囲気にしたようなメロディと、なぜかイースⅥの『ARMORED BANE』の出だしにそっくりなワンフレーズを合わせたような始まりから、お馴染みの行進曲を思わせるなメロディへと続きます。
オーケストラサウンドのため、ファルコムらしいリズミカルなフィールド曲ではありませんがテンポはよく、勇ましい前半のメロディから、サビで哀愁と情熱に満ちた激メロになるところが大好きです。
8,
イクルシアン・メモリーズ
(イースⅧ -Lacrimosa of DANA-)
Falcom Sound Teamの作曲センスが光る『ICLUCIAN DANCE』とメインタイトルでもある『LACRIMOSA OF DANA』がメドレーとなっており、前半の哀愁ある情熱的な部分と、ジブリ映画で味わうような存在感のあるメインタイトルのメロディで締める良曲です。
サントラのオリジナル曲のように勢いのある感じとは違い、チェロとピアノのしっとりとした雰囲気と、アコースティックギターでスパニッシュミュージックの哀愁をより感じられます。
9,
翼の民を求めて
(イースⅥ-ナピシュテムの匣-)
オーケストラサウンドで壮大な世界観を優しく表現している部分と、物語終盤の激しい展開の雰囲気の後半で、イースⅥでのアドルの冒険をとても感じれる曲です。
オルハの笛の音をしっかりと最後の最後にもってきているところもよく、
10,
MIGHTY OBSTACLE
(イースⅥ -ナピシュテムの匣-)
イースシリーズのボス曲で比較的よく出会う構成という印象で、とてもテンションの上がる激しいメタル調の曲です。
その構成というのは、イントロからサビまでの間はいかにもボス戦らしい激しさを重視したメロディで、サビで一気に哀愁感や勇壮な激メロをもってくるという形です。
今作のアレンジは、バスドラムをしっかりドコドコさせたスピードメタルになっており、この曲の特徴である古代エジプト音楽を彷彿とさせるメロディで激しく進行して行く部分が、キーボード演奏とギター演奏で表現されており、バックで主張しすぎないシンフォニック風演出も追加されております。
メタルで期待するギターソロもしっかりと有り、速弾きとハモリが格好良いです。
11,
CROSSING RAGE
(イース SEVEN)
ゲーム使用ヴァージョンに忠実で、とても聴きやすいハードロックアレンジです。
バックの刻みギターリフが心地良く、ギターとキーボードのハモリも綺麗で気持ち良いです。
曲展開の中で初代J.D.K.BANDを思わせる、静寂キーボードキラキラが個人的に好きです。
12,
CLOACA MAXIMA
(イースⅨ -Monstrum NOX-)
原曲自体とてもポップで哀愁のあるメロディが特徴な良曲ですが、こちらのアレンジでは音の厚みが数段パワーアップしたヒロイックファンタジーなHR/HMサウンドとなっております。
この曲の最大の売りでもあるヴァイオリンもたっぷりと演奏しており、途中から疾走感が一気に上がる展開となっており、アレンジならではの複雑化された演奏が格好良く、ヴァイオリンとギターのユニゾンとハモリが聴きどころだと思います。
13,
ADOL CHRISTIN -The adventure goes on-
イースⅠ・Ⅱからの世代の方にはお馴染みなアドルのテーマを、雰囲気と世界観をそのままにしっかりと演奏感を味わえる格好良いアレンジとなっております。
そしてこの曲の最大の特徴は曲展開にあります。
イースⅠ・Ⅱ → ワンダラーズフロムイース → イースⅣ THE DAWN OF Ys と、
曲のヴァージョンがメドレーのように次々と変化していくという、とても粋な構成になっているので、アレンジとしての新しさと歴史を感じる懐かしさを同時に楽しむことができます。
メロディは適度なヒーロー感と、哀愁感にせつなさを少し混ぜた絶妙さが素晴らしく、演奏もヴァイオリン、ギター、キーボードの主張がとてもバランスが良く聴きやすいです。
ヴァイオリンとギターのハモリはもちろん、バックで支え壮大さを演出してくれるキーボード、静寂部分を担当するベースなど沢山の聴きどころと、ファンの心を掴む素敵な曲構成でまさに神曲です。
最後に
1990年代に比べたら頻度は少なくなったと感じますが、日本ファルコムさんは新作ゲームをリリースすると、しっかりとアレンジ企画を実施してくれて、ファンタジックなバンドサウンドが大好物のわたくしにとって、本当にありがたいです。
イースシリーズ35周年記念ということですが、欲を言うと曲数が少なすぎる気がします。
アレンジなので仕方がない部分もあるとは思いますが、2枚組ぐらいのボリュームは欲しかったです。
その辺は区切りの良い40周年に期待するとして、選曲自体はとても素晴らしいと感じます。
ゲームやアニメじゃないとなかなか出せない世界観を、演奏家をしっかり起用し本格的にアレンジした今作品、とても気に入りました。
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